『とら』というネコ

10年くらい前の春先。一匹の茶とらの野良猫が顔を出すようになってきた。不憫に思いゴハンをあげるようになるとそのうち、後にニックとシロと呼ばれる猫を引き連れて訪れるようになった。その後分かった事だが、三兄弟は裏のアパートに住むお兄さんに世話されていたのだそうだ。そのお兄さんのアパートが取り壊されて餌場を失った三匹。リーダー格のとらが先発隊として我が家にやって来たのだった。とら柄のそれは、ゴハンを出すと他の猫が争って食べるのをよそに知らん顔。皆の食事が終わると、重い腰を上げゆっくりとお皿に向う、いつも一番最後に食べる猫。兄弟のニックが風邪を引いた時には、側に寄り添いながら私たちに助けを呼んでくれた。子猫の迷い猫が訪れたときも、付かず離れずな位置でいつもその子を見守っていたっけ。

6年前、近くの雑木林が開発されそこを追われた猫が居場所を探しにやってきた。ニック、とら、ちゃーたん(とらの甥っ子でしろちびの兄弟)がその猫とのケンカで相次ぎエイズと白血病に感染。ニックは病院で、ちゃーたんはとらに見守られながらお星様になったんだよね。

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風邪のような症状から一時的に良くなった後、坂を転げ落ちるように衰弱していくパターン。とらに限っては初期の症状は一緒だったが、その後病気を封じ込めてしまったようだ。ちょっかい出しまくりなのんに対しても、噛み付かれようが何されようが黙認し、具合が悪くなれば寄り添ってくれるとら。優しさと強さを持ち合わせた猫。大したヤツだよおまえは。

店長。

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